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#223 「革靴サッカー」
ワールドカップの話題で花盛りだ。日本が3大会連続で1次リーグを突破したというのもさることながら、トーナメントでいきなりブラジルと当たるというのも盛り上がりに花を添えてくれている。サッカーワールドカップ、1998年、日本が初めて出場を果たしたとき、私はシンガポール滞在の9年目だった。その年、そして次の日韓大会の2002年と私はシンガポールで大勢の日本人やシンガポールの友人たちと一緒にわいわいと応援していた。サッカーという競技にそれほど造詣が深いわけではなかったが、地元チームへの愛もあって大きな歓声を送っていた。そして周りの東南アジアの人たちも「同じアジア」という理由で日本を応援していることが圧倒的に多かった。シンガポールも国としての参加はなかったが、国全体がお祭りムードになるのは同じで、98年フランス大会でフランスが3-0でブラジルを破って優勝した時は、Deli-Franceの店に火がつけられたほどだ。
さて、私自身の子供時代を振り返ると、運動は得意ではなく、小学校の時はほとんど5段階の3だった。総合的に言えば、ウンチ(運動音痴)だった。特に鉄棒やマット運動や水泳といった「個人の身体能力がものをいう」競技は苦手であったが、一方で球技はといえば、まあまあできたし、好きでもあった。近くの公園でよく野球(の端くれみたいなもの)をやっていたし、高学年ではサッカー好きの担任が中心になって、私たち同級生は、運動場をボールを追いながら走り回っていた。中学の時はバスケ部に入ってベンチを温めつつもそれなりに頑張っていたと思う。高校の球技大会では毎年ハンドボールを選んでいたし、卓球も下手の横好きだった。
そんな私が新入社員時代に興じていた球技がある。いや厳密には球技というか遊びに毛の生えたくらいのレクリエーションだった。某大手楽器製造会社に就職した私は、最初から本社勤務だったが、本社といってもかなりこじんまりしており、同じ敷地内に管理棟、開発棟、そして音楽教師を育成する音楽学園の建物が中庭(兼駐車場)を囲むように建っていた。私は昼休み、会社の弁当をかき込むといつも勢いよくその中庭に繰り出し、「蹴鞠(けまり)」の輪に入っていった。そう、ボールこそ実際のサッカーボールを使っていたが、10人ほどが輪になってそのサッカーボールを蹴ったりヘディングをしたりして、とにかく地面につかないように回し続けるというたわいもない遊びだ。参加者はだいたい新入社員か数年目までの若手男性社員ばかりで、そのほとんどは開発職員で、管理棟からの参加は私一人だったと記憶している。

私はその昼休みのレクリエーションが好きでたまらなかった。なぜなら、必ず「唯一の管理棟からの参加者」そして「ワイシャツに革靴でサッカー(蹴鞠)をする」という話題性と、意外に上手に蹴る、巧みな技を繰り出すということで皆の注目を浴びたからだ。ちやほやされて伸びるタイプの私。その後、蹴鞠の技術はグングン上手くなっていった(と勝手に思っている)。昼休みが終わると部署に戻るわけだが、ワイシャツは汗まみれ、ビジネスパンツも革靴も砂まみれでボールの型さえついている。そんな格好で昼からの仕事をするものだから、先輩の女性社員などから「あらあら革靴でサッカーやってるのね」といじられる。それが皮肉とも気づかず、またまた「注目を浴びている」と得意になる私であった。

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