「サンキューハザード」

私は自分の能力について、ひとつだけ自信を持って言えることがあります。それは、車の駐車が下手だということです。これは、正確には「負の能力」と言った方がいいでしょう。

生まれ持った天性のものも多分にあるのでしょう。車の免許を取ってからちょうど今年で40年、本格的に運転し始めてからでも35年たつのですが、どうしてもうまくなれないのです。

車庫入れは未だに何度も切り返します。その挙句、やっとうまく入ったかなと車を降りてみると、見事に歪んでいます。2台の真ん中に駐車すると、片方に寄りすぎていたりします。これが前向き駐車のときでさえ、まっすぐになっていないので自分でも呆れています。多分、脳の中の平衡感覚がおかしいのでしょう。そのくせ、机やテーブルや置きものなどがまっすぐになっていないと気持ち悪く、何度もまっすぐに直したりします。人間の性質や能力というものはうまく理屈で説明できないようにできているのかもしれません。

さて、車の運転に関しては、駐車だけではなくて、運転全般に関してもまったくもって上手いと感じたことがありません。大きな車は、特に年齢も重ねた今はもう操作が難しいので、軽自動車に変えました。今のところ、快適に運転しており、変えてよかったとしみじみ感じています。

車の運転自体は大好きで、つまりは「下手の横好き」というわけですが、幸いなことに今まで小さな自損事故を除いては事故らしい事故を起こしたことがありません。この先、いつ免許を返上するかわかりませんが、このまま無事故で行きたいと心から願います。そのためにというのもありますが、普段から交通ルールには特に気をつけているつもりです。もう40年も前に教習所で習ったことは、愚直に実行しているつもりです。

制限速度、車線変更、一時停止などなど。赤信号で行ってしまうことはまずありませんが、たまに青信号で止まってしまうことがあり、後ろから盛大にクラクションを鳴らされたりしますが。やはり危ないですね。

そのような交通ルールの中には、実際に走り始めて周りの様子から学んでいく「カスタムルール」(自分でつけたいい方ですが)というものがあります。曲がる直前にとってつけたように1~2秒ウインカーを出す車が多いように思いますが、これは単に不精さが慣習になっただけで、死んでもフォローしようと思いませんが、交差点で反対方向からくる車に「行ってください」とパッシングすることや、道を譲ってくれた車にピカピカと「サンキューハザード」を出すことは知らず知らずのうちに自分の中でもカスタムルール化されてきました。昔は、狭い道の対向車線などで止まって譲ってくれた車に、ピッとクラクションを鳴らしてお礼をしていたようですが、今はあまり聞かないようです。

そんな中で、今朝読んだネットコラムの中に「サンキューハザードは百害あって一利なし。辞めるべし」というものがありました。そもそもハザードの使い方が間違っているし、「緊急停車」と間違えられてリスクの方が大きいというものです。ふむ、なるほどとは思いますが、さて自分が他人の車に道を譲ったときに「サンキューハザード」を出されると、なんだか「いいことをした」と嬉しい気持ちになるし、逆に出さないと「なんだこのやろう」という気持ちになるような気がします。慣れというものは本当に厄介なものです。

どうでしょう、新しい車を開発する大手各社は、車に新しく「サンキューランプ」を装備するというのは。逆にややこしいか。

矢野健太郎

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