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Myコラム(9)「サ高住という選択肢」
サービス付き高齢者向け住宅(通称サ高住)という制度が整備されたのが2011年のこと、このサ高住を終の棲家として選択する方が増えてきています。
昨今の介護業界において、運営側から見たサ高住の在り方も様々に変化してきています。多くは小規模多機能事業所や居宅介護支援事業所(ケアマネさんのいる事務所)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所など(だいたいの介護保険の事業所は言うのに舌をかみそうになりますが)など様々な介護保険サービスと組み合わせて、住人へのサービスを手厚くし、法人としての収益を上げようとしているというのが真実だと思います。それは業界の生き残りの中で必要な運営方法と言わざるを得ません。
一方で、私がかつてサ高住で働いていたときの思いから言えば、サ高住はあくまで「住まい」であり、他の介護保険施設に入るのは「入所」であるのに対して、サ高住は「入居」であり、もっと踏み込んでいえば、「住み替え」であると思っています。
サ高住に住み替えをする理由は多岐にわたります。「家屋の中がバリアフリーではなく、転倒を繰り返している」「自宅が坂の途中にあり、買い物がつらくなってきた」「自立で何とか生活できるが、家族が遠方のため何かあった場合に不安」など。逆に「親が遠くで独り暮らしなので、呼び寄せたい」という家族の立場からのニーズもあります。
サ高住には、原則60歳以上であればどなたでも入居できることになっており、自立の方、要介護の方、障害を抱えておられる方、認知症の方とさまざまです。そのような方々が、私の感覚では、「サ高住という『小さなコミュニティ』の中で暮らしていく」のだと思っています。要するにひとつの小さな地域です。
サ高住の中での生活は、その事業所によって若干の方針の違いはあるかと思いますが、基本は自由が確保されています。自由に外出し、自由に帰宅する。(感染症が蔓延しているなどの際のルールがあるなどの場合を除いて)家族や友人の訪問も自由です。入居者は、法人と賃貸借契約を結んで、入居者としての権利が保障され、その中には「長期入院などの理由によって契約が解除されない」といった条項もあるはずです。この賃貸物件を「終の棲家」として考えている方も多いと思います。
もちろん、「高齢者向け住宅」ですから、単なる賃貸アパートではありません。その住まいに「基本サービス」と呼ばれるサービスが付加されることで、安全と安心が確保されます。基本サービスは制度で決められたものに、「安否確認」「緊急対応」「バリアフリー構造」などがあり、そこに事業所ごとの有償の付加サービスもあるような構造になっていると思います。
皆さん、サ高住を利用しましょうという宣伝ではないのですが、有力な選択肢の一つとして検討されればいいかなと思います。高齢になり、独居やいわゆる老老介護になると、本当は自宅で住み続けるのが一番いい(それも、その方の考え次第ですが)のでしょうが、多くの理由でそれが難しくなることも多いです。どんな介護サービスを利用しながらでも施設であるか賃貸住宅であるかの違いはあっても、最後まで尊厳が確保され、質の高い生活ができることを、自分のこれからのことも含めて、願っています。
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