#065 「わかるか、なあ酒よ」

お酒が歌詞に出てくる曲は、特に演歌には溢れるほどありますが、お酒に直接語り掛ける曲はそうそうないと思います。そういう意味で吉幾三さんはすごく曲作りのセンスのある方だと思いますよね。

 前回が六角精児さんの呑み鉄旅だったので、その流れで今日はお酒です。学生のとき、フランス語会話のフランス人男性の先生(ちょっとシルベスター・スタローンのような肉体派タイプの方)が、それぞれ好きな題で短い作文を書くよう宿題に出しました。1回生のときです。劣等生の私は辞書を引き引き、なんとか「お酒」について書きました。まあよく考えたら、当時18歳の私が「お酒」について作文を書くなんざ、なんたることか!ということですが、当時は大学に入ったら酒を飲むのが当然のような悪しき風習があったということです。目をつぶってください(つぶれない?)。

 そうしたら、普段、授業の中では空気のような存在の私でしたが、そのフランス人の先生は作文を見て「ブラボー!」と雄叫びを上げ、「こういう題材はとても楽しくなるから、みんなどんどんこんな作文を書こう!」とフランス語でまくしたてた(と想像します)。まあ何を言ってるのかほとんどわからず、それから私にもいろいろ質問をしてきましたが、私はその先、貝のようになりました。

それほど、ヨーロッパ、特にフランス人にとって「お酒」はいつも「愛の賛歌」を捧げている宝物のようなものですね。世界中どこでも似たり寄ったりですが、それは日本でも変わらない、いわば世界普遍の楽しみのようです。「お酒が飲めない」という人はいますが、最近はノンアルコール飲料がまるで本物のように進化してきましたし、わりと「飲めないけど、雰囲気は好きですよ」という方にもよく会ったりします。

 そういう私も(なにせ18歳でお酒の作文を書いたくらいですから)お酒は大好きですが、それほど強くもなく、それほど弱くもなく、そして「量より質」というタイプです。では高品質のお酒をいろいろ試して回っているのかといえば、私は六角精児さんではないですし、また高級なお酒は正直、おいそれとは買えません。スーパーに並んでいる普通のお酒のラインナップの中から、若干高めの好みのお酒を選んで、それを時間をかけてチビチビと楽しみながら飲むタイプです。それで楽しめるのだからいいですよね。お酒の楽しみ方は100人100通りだと思います。

 種類は、夏はビール、それ以外は焼酎が主体ですが、どんな種類でも美味しいものは好きです。また、「人が美味しそうに飲んでいる絵柄」に見事に感化されます。テレビCMなんかは本当に買わせる戦略が徹底していますよね。ビールの泡を口につけながら、あの喉を通るごくっごくっという音と、喉ぼとけの動くさま。すぐにでも買いに行きたい気分になります。あとは、六角さんの番組も最たるものですが、よくある「酒蔵や醸造所を回って試飲する」タイプの番組。もうたまりませんよね。

 そうやって簡単に扇動されて、スーパーや酒屋に走る人々の群れの中に確実に私はいます。「そうやって私たちは君に煽られていくんだよ。わかるか、なあ酒よ」

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