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#194 「みなとがわ」
私は神戸で生まれ育ち、途中いろいろな土地を巡った後、今こうして神戸に帰ってきて住んでいる。すごろくで「ふりだしに戻って」そのままもうサイコロを振らず居座っているような感じだ。私にとって神戸はまさに「ふりだし」である。
しかし最初にスタートした神戸とふりだしに戻ったあとの神戸はかなり様子が違っている。スタートの方は郊外の住宅地で、ふりだしに戻った後は、庶民的な下町である。そしておそらく私はこのままこの下町に骨をうずめることだろう。
みなとがわ、住んでいる場所は地域的には神戸市兵庫区の菊水校区という区域であるが、すぐ隣には東山商店街という神戸随一の新鮮市場がそびえ立っている。まるで巨大なお城のように。そしてこのお城はみなとがわ界隈に住まう人々にとってはかけがえのないものである。生活の中で欠くことのできないもの。物理的にも精神的にも。この地域の人はその城下町の住人なのだ。

今まで結構な数の土地を巡ってきたので言えることだが、この城下町は他と比べてもかなり特異だ。なかなか言葉では表現できにくいものがあるが、人と人の距離感が半端なく近いような気がする。ただすれ違っているだけの赤の他人のはずが、まったく赤の他人とは思えなく感じるので不思議だ。おそらく生活水準は他と比べて高いとは言えまい。本当に多様な人々がすれ違っていく。老若男女、身体障害や知的障害の人も、精神疾患を抱えた人も、外国人も、認知症の人も、病に苦しむ人も、生活が苦しい人も、特殊詐欺に騙された人も、物価上昇に怒っている人も、政治に不信感を抱えている人も、不登校の子も、社会に出たくてもなかなか出られない人も、介護で疲れている人も本当に多様な人々がすれ違っていく。
でも多くの人が「生きづらさ」を抱えているはずなのに、それを感じさせない、この活力みなぎる空気はなんなんだろう。この生き生きとした感じはなんなんだろう。人々がすれ違う時、声を掛け合うときに漂うパリッとした空気はなんなんだろう。この愛にあふれた感じはなんなんだろう。
先のことはわからないけど、この地に出会ったことの奇跡、これからの人生をこの地で過ごせるであろうことに感謝の思いでいっぱいである。

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