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#187 「あのベンチ」
普通なら「どのベンチ?」という話しになると思うが、とあるマニアの間では「あのベンチ」というだけでわかるらしい。つまり、「あのベンチ」という特定のベンチがあるようだ。最近、それをNHKのドキュメント72時間で知った。
滋賀県彦根市の琵琶湖沿岸にあるそのベンチは、琵琶湖を広く見渡せる位置取りは良いにしても、特段スペシャルなものでもなく、一部は少し木の部分が朽ちかけている普通のベンチだ。ゆったり座ると3人は座れるが、それ以上でもそれ以下でもない。
いつからか「あのベンチ」は「ああ~!あのベンチね」という口コミで広がり、わざわざ車で遠くから見に来たり、琵琶湖一周のツーリング中の必須の通過ポイントとして、常にバイクや車が集まっていたり、近隣の人は近隣の人で散歩コースの立ち寄りポイントとして、そこに座ってボーっと琵琶湖を眺める時間を大切にしたりしている。

そして、今やこのベンチはもはや「ベンチ自体が貴重で珍しい」というより、ベンチの周りに集まることが目的になってきている。つまり「あのベンチ」を中心としたコミュニティになっているということだ。ベンチ自体は一休みをする、夕陽の湖畔の絶景を眺める、一日を振り返ってホッと一息つき、また明日頑張ろうと思う、とにかく何も考えずにボーっと過ごすなどいろいろな役割があるが、こんな風に人が集まる場をも作り出すという役目もある。それがコミュニティベンチなのだ。
とにかくベンチはいい。私たちも近隣を散策したり買い物で回ったりするときは、必ずどこかで休めるベンチはないか探すが、意外にありそうでないのが地域のコミュニティベンチだ。せいぜい、人や企業が個別に提供しているベンチがぽつねんと置かれている。
いこいの広場3丁目にも2つベンチがあるが、もっと活用しよう。場所柄、ちょっと奥まっているので、通りすがりの人が何気なく休んでいくという光景はほとんどないが、以前は近所のおじさんがよく座って煙草をふかしていた。最近ではどこかの白い猫が悠々と寝転がっている。そのおじさんや白い猫にとってはこのベンチは「安全基地」であったということだ。そうだ、「このベンチ」という名前で(二番煎じか)口コミで広げて、そのうち地域のコミュニティベンチとなるように工夫していこう。バイクのツーリングとかの聖地になったらなったで困るけど。
(写真:「あのベンチ」)

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