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#171 「ぼおっと過ごす時間」
一昨日はほぼ丸一日かけて、この夏、突如発生した目眩の原因を調べるため、「メニエール病」であるかどうかを調べる検査を市民病院で受けてきました。その時に、MRIの隔離された待合室で順番が来るのを30分程度待っていたのですが、そこは自分の私物はすべて預けて病衣だけになります。だだっぴろい殺風景な部屋は、金属類を近くにおけないので、時計さえありませんでした。
3~4組の人たちがひたすらMRIの順番を待っている、そんな人たちを眺めながら、とても落ち着かない、無性に時間を持て余す気持ちでした。思わず手がいつもスマホを入れているところに伸びますが、もちろん何もない。本もない。いつまで待つかもわからない。そこで思ったのが、普段、このように「何もない」環境でぼおっと過ごすことって本当になくなってしまっているなあということです。
常に何かをしていないと落ち着かない。何もすることがないときでも、何か取り入れる情報がないか探している。スマホ、本、もしなければ周りにあるチラシやパンフレット類、貼り紙、壁にかかっているテレビ、新聞。ああ、せわしや。どうしてこうなったのか、いつからこうなったのかわかりませんが、逆に若いころにはもっとぼおっと過ごす時間があったような気がします。
最近の脳科学で、人間にはこのぼおっと過ごす時間がとても大事なことがわかってきました。「脳のデフォルトモードネットワーク」が働くのです。これが働くときは、脳が逆に活性化し、今まで脳内に蓄えられた情報を整理し、それらを活用していくためのとても重要な作業をしているのです。何かのベストな対処方法とかアイデアとか創作とかはこういう時に浮かぶものです。苦しんで考え込んでいるときには逆に浮かばなかったりします。

貧乏性とでもいうのでしょうか、いつもせかせかと何かをしているのは、やはり心に余裕がなく、本当の「ぜいたくな生活」をしていないんでしょうね。ちょっと悲しくなります。でも自分がいやいやながら忙しくしているとか、せかせかとしているとか言うのではなくて、どうしても「動かずにはおられない」のです。いつからこうなったんでしょうね。時間を無駄にしたくないという思いが強くなりすぎて、かえって大事な時間を失ってしまっているような気がしてきました。
ほとんどなくなってしまった「ぼおっと過ごすぜいたくな時間」を取り戻したい気持ちでいっぱいです。こういう時間を最後に経験したのはいつごろだったかなと考えると、大学の卒業の時に日本一周の各駅停車の旅をした時だったかなと懐かしく思い出します。ほとんどは何をするでもなく車窓の外に流れる世界をぼおっと眺めながら、本当にぜいたくな時間を過ごしていました。ウォークマンでラムゼイ・ルイスのピアノ曲を聴きながら。
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