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#169 「タービュランス」
タービュランス、すなわち乱気流です。今年8月12日は日航ジャンボ機墜落事故から40年の節目でしたが、事故当日は、まだ入社2年目だった私はお盆休みが始まったその日に小旅行先の長野県でこのニュースを知りました。「こんなに近くであのジャンボ機が落ちた!」というのは相当驚きでしたが、当時、飛行機には乗ったこともなかった私には、あまり現実味のない驚きでした。
日航ジャンボ機の事故は乱気流とは無関係のようですが、まさか将来的に、この恐ろしい乱気流と私の長いおつき合いの歴史が始まるとは思ってもみませんでした。その翌年の1986年に私は結婚し、新婚旅行で人生初の飛行機に乗り、北海道に行きました。何かあったときのため、ということで意気揚々と旅行保険に申し込みはしましたが、正直、北海道までの往復は機内で怖いと思ったことはありませんでした。
1989年、結婚から3年後、私はシンガポール赴任となり、妻とともに初めての海外住まいをすることになりました。その後、自慢にはなりませんが(と言いつつひそかに自慢していますが)毎月4回程度(つまり2往復程度)は飛行機に乗り近隣の国々に出張するようになりました。正確に数えたわけではありませんが、駐在員として滞在していた11年間で見積もってみると、500回は超えている計算になります。我ながらよく乗ったものだと感心します。
で、本当に言いたいのはここからで、タービュランスのタイトルをつけた所以になります。不思議なのは、新婚旅行の時を含め、最初のころは飛行機に乗るのを怖いとも思ったことはありませんでした。どんなに揺れようがです。初期のころにどのフライトでどのくらい揺れたかなんて記憶しているはずもありませんが、「揺れる=落ちる」などという発想はありませんでした。

それがいつからかはわかりませんが、スペクトラムのようにじわじわと乱気流が、そして飛行機に乗ること自体が怖くてたまらなくなってきました。「慣れ」の逆バージョンです。東南アジアの圏域内を行き来するわけですからフライト自体は長くなく、長くてせいぜい2~3時間くらいのものです。それが搭乗ゲートから緊張し、手汗を搔き、何度も空の様子を見上げて雲の厚さとか雨の降り具合を確かめる始末でした。
よく思い出してみれば、「揺れる=落ちる」という図式がいつも脳内にあったわけではありません。落ちるかもしれない怖さよりも、こんな重く大きな物体が宙に浮いて、しかも揺れている、そのことをイメージすると怖くてたまらなくなってきたのです。
いざ飛行機に乗ったら、穏やかなフライトの時は本でも読みながら気を紛らわせていますが、少しでも「ガタン」と始まると、あるいは機内で「これから気流の悪いところを通過します」なんて言うアナウンスがあると、もう手すりにしがみついていました。顔は青ざめ、冷や汗がタラーッと。きっとお隣の席の方は不審に思ったことでしょう。
こういうのは科学的に(あるいは医学的に?)どう説明されるのでしょう。いまだに謎です。幸運なことに、日本に帰国して以来、パタッと飛行機に乗る機会がなくなりました。国内出張さえない業界に入ったのです。プライベートで2回ほど乗りましたが、おかげさまで乱気流はあまりなかったように思います。もし次に飛行機に乗って乱気流に巻き込まれることがあったら身体と心はどんなふうに反応するのでしょう。楽しみです。いや、楽しみなはずがないでしょう。 (写真:Japan Airlinesウェブサイトより)
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