#162 「名曲百選、いや三選(クラシック小品編)」

 私の音楽人生はクラシックから始まりました。ある日、父が会社帰りにラベルの「ボレロ」のEPレコードを買って帰ってきたのです。当時私がいくつくらいだったか正確な記憶はありませんが、小学校にも上がっていなかったかもしれません。当時からルーティーン志向の父は繰り返し何度もボレロを聞いていたと思います。それまでは母が毎朝歌う唱歌や幼稚園で習うような曲三昧だった私に初めて割って入ってきたクラシック曲。でも、正直、あまり好きになれませんでした。というより「よくわからなかった」というのが率直な感想かもしれません。

 それで、今日はシリーズの2回目で「クラシック小品編」です。「小品」の定義もよくわかっていないのですが、要するに10分以内くらいの短めの曲ということで。

 ひとつ目は、ラベルのピアノ曲「亡き王女のためのパヴァーヌ」です。これはいいですね。印象主義音楽の代表者でもあるラベルの曲で、同じラベルでも「ボレロ」とはかなり趣が違います。私の頭には、この曲を聴くといつも同じ光景が浮かびます。それは「優しい雨」です。この曲は、実在の他界した王女にラベルが思いを寄せて作ったような勝手な想像もしていましたが、実は特定の王女に捧げられたものではなく、「スペインにおける風習や情緒に対するノスタルジアを表現したもの」とのことでした。私の場合はなぜか「優しく街角に降り注ぐ雨」を想起させる、やはり印象主義だなと思える代表曲だと思っています。

 ふたつ目は、スメタナの交響詩「モルダウ」です。これは昔から好きでしたが、後になってからNHKの名曲アルバムにかなり感化された気もします。つまり、あの名曲アルバムに流れるテロップの世界が脳内の記憶に上書きされてしまったようです。モルダウというひとつの劇が、あのオーボエの印象的なイントロと同時に始まり、フルオーケストラヒットのジャンという大きな音で終わるというひとつの劇です。なにより、あのイントロから間もなく入る「モルダウの力強い流れ」が好きなのは言うまでもありません。

 三番目は、シベリウスの交響詩「フィンランディア」です。この曲も昔から好きでしたが、逆に言えばその他のシベリウスを知りませんでした。それがここ2年くらい交響曲を聞くようになり、改めてシベリウスという作曲家の偉大さを知ることになりました。メロディーラインがとにかく美しく印象的で、ラフマニノフと甲乙つけがたいと思っていましたら、ほぼ同じ時代を生きた作曲家でした。フィンランドの第二の国歌、帝政ロシアからの独立を歌った曲だそうです。雄大な北の大地の風景が目に浮かぶ「フィンランディア賛歌」の部分は特に心を打たれます。

 以上が名曲三選、クラシック小品編ですが、いや小品じゃないですよね。少しミーハー感は否めませんが、それだけすべての人に愛される曲だということかもしれません。

(画像:HIS 予約サイトより)

コメント

コメントする

目次