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#113 「ザ・サウンドオブミュージック」
同じ作品を何度も見返すことがあります。テレビドラマ、本、映画などそれぞれにありますが、まあ余程好きなものを除いては、せいぜい2~3回見返す、読み返すことで満足しますが、中には本当に10回見返してもまだ足りないと思うものもあります。その代表が、本では村上春樹の「ノルウェイの森」、映画では「ザ・サウンドオブミュージック」でしょう。
「ノルウェイの森」は、いわゆる文学として研究者が研究するような読み方はしたことがありませんが、とにかくそこに流れる少しヒヤッとした乾いた爽やかな空気感が好きで、どちらかと言えば「絵画」を鑑賞するような感じで読んでいます。そこから感じる「絵」のイメージは、さわやかなそよ風が吹く草原、乾いた冬の空気の中の療養所の中の白い雪の残った道路、みどりの部屋の窓から見えた煙突の見える街並み、ワタナベ君が下宿の家の縁側でカモメ(猫の名前)と一緒にぼうっと眺めている春の庭、そんな絵のピースピースが繰り返し走馬灯のように流れるそんな世界をときどき鑑賞しに行きたくなるという感じです。
「ザ・サウンドオブミュージック」も今までほとんどは「ノルウェイの森」と一緒で雰囲気やその世界や風景や出来事の面白さなどで長く楽しんできました。定期的に年一回とか、何年くらいに一回とか決まりごとはなく、集中して何回も見る時期、遠く忘れ去ったくらいの時期にふっと見たくなって見てしまうときなど種々様々ですが、おそらく今まで10回は軽く超えたでしょう。妻は25回くらいは見たという話で、自分の存在を支えるもの、なんなら人生観そのものになっています。そこにはまだまだ及びませんが、私にとっても青春時代から大人になり、おじさんになるまで人生を通じて自分のQOLを上げてくれた、なくてはならないものであったと言っても過言ではありません。
すでに書きましたように、この映画を私はやはり絵のように抽象的に楽しんできましたが、今回は、もう少し踏み込んで、一つひとつの会話や表情や行動の意味などを見ることができたと思いました。マリアと一緒にいるときと、男爵夫人と一緒にいるときの子供たちの表情の明らかな違いも面白かったです。またこれは妻からの情報ですが、マリアが修道院に逃げ帰ったときに、シスターの志願者として来ていた若い女性の鮮やかな緑色の服を(特に映画の中で取り上げられることもなく)お屋敷に帰ってきたマリアが普通に着ていたこと。そのような「映画の隠し味」的なものも少しずつ分かってくるようになりました。前より英語でよく聞き取れたのも、会話の中の「隠し味」がよくわかった理由だと思います。

そうやって細かく見ていると、本当に一人ひとりの表情や行動や歌に心を動かされ、涙がこぼれ落ちます。ウィーンから戻ってきたトラップ大佐が怒りに任せて口論した後、家から流れてくる「サウンドオブミュージック」のハーモニーに自然に口から歌が出てくる場面、修道院でマリアを諭す修道院長の歌う「クライム・エブリ・マウンテン」、教会での結婚式の場面、これまで以上にうるうるでしたね。
おそらく、この映画は死ぬまでにもう10回は見るんじゃないでしょうか。何とかそれくらいは見て、今度は会話の端々まで味わってみたいと思います。さっそく、妻から映画のスクリプトを貸してもらいました。
(写真:映画.comサイトより)
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