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#095 「弟」
2つ年下の弟は今月半ば、横浜でのマラソンイベントに参加した際、会場の日産スタジアムで倒れ、一時心臓が止まってAEDの救急救命措置を受けたあと、スタジアムのすぐ横の横浜労災病院に素早く搬送され、九死に一生を得ました。
リレー式にタスキをつないで、スタジアム内をグルグルと制限時間内に何週回れるかという競技で会社のチームで参加しており、弟は次のランナーにタスキを渡したところまでは覚えているが、そこから先の記憶がなく、気がつけば病院のICUで多くの機器をつけられている状態だったとのことです。ただ、同じチームの仲間の方は、弟が走り終わって自分の席に座り、スマホを手に取る姿まで確認しています。その姿勢のまま、真横に倒れたということでした。
心臓が止まった原因はあまり一般的なものではなく、多くの精密検査の結果わかったのが「冠攣縮性狭心症(運動刺激性)」と聞きなれない病気の診断でした。弟の場合、冠動脈のひとつに細い部分があり、運動時の刺激が引き金になって、その部分が狭窄した可能性が大きいとのことでした。同病院が権威でもあるS-ICD(皮下植え込み型除細動器)を埋め込む手術を行い、そのテストやリハビリを経て、今は普通の生活なら送れる状態になり、元旦を前に今日、めでたく退院する予定です。
思えば、弟は「走ること」「山に登ること」に愛着が非常に深く、普段からランニングを欠かさず行い、鍛えてきた人間でした。趣味の域は越えていたと思います。それらの運動が限界を超えたのかどうかわかりませんが、それほど鍛えた身体でも、こういう病変は突然襲ってくるわけです。やはり人間、いつ、どこでどのように変化が訪れるか何もわからないというのは強く感じました。
弟の場合は、まさに「不幸中の幸い」という状況がまるで夢のように重なって、生きながらえたということが言えます。まず、そういう競技イベントの衆人環視の下で倒れたので、救急体制やAEDなどがすぐに効力を発揮したこと、そしてすぐ隣が総合病院だったこと、そこがS-ICDの権威だったことなどです。これが、一般の路上で起こったことであれば、たとえそれが街中であれこうはいきません。山の中であればなおさらでしょう。命はなかったかもしれません。弟は、まさに「生き残るべくして生き残った」ということだと思います。
私たちが子どものころから兄弟喧嘩をすると、いつも感情的になって手や足が出る兄に対して、いつも冷静に論理的に攻めてきた弟。ときには感情を諫められることも多かったと記憶しています。住む場所が離れてほとんど連絡しなくなったことも多かったですが、久しぶりに会えば、なんだかんだと話が尽きず飲み交わした弟。親父や兄より先に逝ってしまうことがないように頼むで。残りの人生は走らずゆっくり楽しんでや。
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