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#075 「64歳 禁断の入院生活 ② ~たそがれの病室編~」
記憶がだんだん薄れるので、早く書かなければなりません。
病室は言うまでもなく大部屋です。4人部屋でした。差額ベッド代はバカにならないし、なにより個室は寂しいんじゃないかなと思いますので。
大部屋と言えば、昔は本当にそれぞれの患者さんの間に仕切りがなくて、差し入れを分け合うほど親密になったり、言い争いが勃発したり、患者さん同士の勢力図ができたり、いわば人間関係の縮図のような世界だったと思います。ただ正確にはわかりませんが、私が介護施設で働いていた途中くらい(10年~15年ほど前かな)から、つねにカーテンが閉まっていることが多くなったように見受けられます。私もカーテンをくぐって「○○さん(利用者さん)、いかがですか~」とお見舞いすることが出てきました。なぜかうちの母親の場合はいつもオープンだったようですが。なんでだろう。寂しがり屋の母親に配慮してくれたんじゃないかな。その患者さんの状態や希望によって臨機応変にされていたということでしょうか。
おそらくコロナのころから、この鉄のカーテンは常時締められるようになったのだと想像します。私もすでにカーテンが閉まった部屋に案内されました。そうなると、他の3人の方々とあいさつするタイミングも難しく、ほぼコミュニケーションのないまま入院生活は過ぎていきました(途中、お向かいのおじいちゃんだけはリハビリのサービスが入っているときに、声かけあいさつさせてもらったくらいで)。
しかし人というもの、仕切りがあると、どうしても向こうが気になり、どんな人かの想像をめぐらせ、聞き耳を立てるという悪い癖があります(私だけ?)。お向かいのおじいちゃんは認知症の初期のようで、医療職のスタッフの声掛けへの返事がとても愉快で、ほとんど声をひそめて笑っていました。たとえば夕食後の会話。「○○さん、歯みがいた?」「みがいた」「え~ほんと?知らんわ。いつみがいたの?」「朝」とか。とにかく、回答が一刀両断で、それでいて相手を傷つけないようで、絶妙なのです。「はい、食後のお薬よ」「飲まへん」「なんで?」「飲みたくないから」とか。
すぐお隣さんは、とにかくいつもガサガサ、ガタン、バタン・・・と小さい音を立てられているおじさんで(まあ後期高齢者という言葉が出てきたので、私から見てもおじさんということでお許しください)、たまに「なにゆーてやがるんでい!」とか「おまえ覚えとけよ!」とか独り言をつぶやいておられる。関西弁ちゃうし。かなり怖い人だと覚悟していました。しかし看護師さんとは楽しくおしゃべりもしている。あとでわかったんですが、この方はほぼ休みなしにテレビを見ていてテレビ相手にしゃべっておられたようです。お一人住まいで生活には苦労しておられるようです。
え~全然終わりませんやん。いつまで続くのやら。連載小説ならそろそろクレームもつくでしょうが、あまり読んでくれる人もいないので、まあいっか。それで、タイトルを「○○編」という具合に変えてみました。たそがれの病室編おわり。つづく。
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