#051 「田中さんと子供たち」

ちょうど終戦の日に放映されたので「終戦記念ドラマ」といわれるのかわかりませんが、NHKの単発のドラマ「昔オレと同い年だった田中さんとの友情」にはまっています。放送日の回を録画したものを2回視聴、その後再放送も見たので、都合3回視聴したことになります。おそらく4回目も見るでしょう。まだまだ見るかもしれません。

 これが筋書きを追うようなドラマであれば、さすがに2回も見れば、もう一度見ようとは普通思わないでしょう。それが4回目も見ようと思う、何がそれほど私を魅了させているのでしょうか。

 最初は、やはり「戦争の悲惨さ、理不尽なところ」に目が行き、田中さんが全身全霊で訴えた「戦争には絶対反対です」という言葉に注目します。そして、戦争と空襲で家族全員を奪われた田中さんに対する憐憫の情や、その後70年間、地域の助けを借りながら一人で淡々と生きてきた姿に同情し、現代を生きる自分と比較もしながら見進めます。

 しかし、そのうち、このドラマのタイトルに表されているように、70年の年の差を超えて見事に成立した「田中さんと子供との友情」に視点が移り、それにただただ感動することになっていきます。

ちょうど、戦争のさなかで残酷な体験をした当時の11歳の田中さんの年齢と、ひょんなことで出会った拓人くんら三人の遊び仲間の年齢が同じ。70年の長き年月をワープしたように浮き上がってきた過去の自分の姿が、出会った三人の子供たちに投影されて、自分の人生でも初めてともいえる、人との「友情関係を結ぶ」ことになる。

そんな、このドラマの主題が、岸部一徳という名優と拓人くん役の子役の素晴らしい演技力で、細かい会話や気持ちやふれあいの中に、丹念に見事に描かれていて、それだけでも涙腺が緩むことになります。そして脇をかためる俳優さんたちの善意溢れる名演技(お母さん役の木村多江、先生役の森永悠希など)や、仲間の二人の子役、クラスの生徒一人一人が一生懸命に田中さんを支えるために真摯な子供たちを演じていることなどに感動するのです。このドラマを形づくっているほとんどの人が「いい人」なのです。

このドラマを見終わったあとは、「希望」と「しあわせ」しか感じません。もちろん、現実の世界はそんなに甘くないでしょう。たとえ「きれいごと」と映るとしても、今を生きる私たちに「このようにお互いがいろいろな壁を越えて、素敵な友情関係を結べるような『希望』をもとうよ」と訴えかけてくれているようで、とても清々しい気持ちになります。

 私たちの地域の居場所はあらゆる壁を越えた地域の生きづらさを抱えた人々が交流し、そしてその強みを発見するという理念のもとに運営していますが、多世代、特に高齢者と子供の交流は本当に目指している姿です。そこに友情が生まれる。そんな私たちの場所で将来実現されるかもしれない素敵な姿を頭の中でイメージし、心の中で微笑みながら、このドラマを見続けています。さあ、4回目はチョコバナナを食べながら見ることにしよう。

コメント

コメントする

目次