#048 「何も言えねえ」

芸能界でFちゃんの言動について連日報道されています。私は芸能界にいたことがないので、それ程詳しくはないですが、少しブラックジョークが効きすぎたのでしょうか、Yさんへの投稿が炎上し、世間から一斉に袋叩きに合い、芸能活動を停止せざるを得なくなったと理解しています。

 投稿自体がどれほど酷く悪意に満ちていたかと言えば、まあ、それくらいのブラックジョークやネガティブジョークはネットに溢れかえっているでしょうし、悪意に満ちているフェイクものや弱い人々の立場を利用して欺くオンライン詐欺行為などに比較すると圧倒的に罪は軽いように思います。それがなぜ、そこまでたたかれたのか、その一つ目の理由は、元々の世間のFちゃんに対する評価やイメージと、いじられたYさんに対するそれとの間に相当なギャップがあって、それが今回の行為に対して、ここぞとばかりに指摘して「ざまあみろ」と思ったもの、それに便乗したものが集中して、誹謗中傷となって噴出したものだと想像しています。マスコミなどで報道されている誹謗中傷の書き込みについて、そのほとんどの人がそれほど罪の意識を感じていない、いわば「時代に乗っかっただけ」の軽い考えのようです。

 そして二つ目の理由ですが、最近よく思うこととしては、世間の評価は、「直感」とか「根拠のない噂」などに大いに左右されているということです。それら直感や噂によって便乗して大きく拡散したものを、ネットを管理している側が交通整理することはほぼ不可能に近いかと思います。つまり、こんなにも簡単に人をたたいたり、誹謗中傷したり、直接、悪口を(しかも匿名で)書き込んだり、書き込まれたものを拡散したりできるしくみができてしまっていますが、肝心要のそれらをうまくコントロールするシステムがないのです。もちろん、そんな悪意のある発信をする人は全ユーザーのごく一部に違いないのですが、このネット世界でその影響力はあっという間に広がってしまい、「大多数の意見」とみなされてしまうのです。

いちばん重要になってくるのは、発信を「受け取る側」だと思います。つまり「もともとは悪意があろうがなかろうが一度拡散してしまい収拾がつかなくなった根拠のない情報」は交通整理が難しく、なかなかなくならないという前提に立てば、あとは受け取る側が交通整理をしないといけないということですよね。

つまりは「○○さんは、こんな人だったのか。ひどい!糾弾するべきだ!」と簡単に捉えるのではなく、もしその情報を深追いしたいのだったら、○○さんはなぜそれをしたのか、それはどういう状況でそうなったのか、その結果どうなったのか、など少なくともちょっとは考えてからものを言うくせをつけておきたいものだと考えます。そうでないと真実はどんどん歪められていって、形を変えてしまう可能性もあると思います。

最初に火がつく前にそれをやっておけば、ある人に集中して火の粉が飛ぶということもなかろうかと思いますが、なかなかそうならない。なぜなら、人は自分の中のフラストレーションを人にぶつけて発散する傾向が強いからです。そして今のネット世界はそれが簡単にできてしまう。そうすると「何も言えねえ」となってしまいます。すべての人が「自分がそれをされたらどんな気持ちになるか」を考えられる余裕のある世の中になればいいのになあ。

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